はまなす放談

HPのリニューアルを機にコラムを設けました。
定期的というわけではありませんが、時代に遅れないように“放談”します。

vol.06 2015年を振り返って

 最大のトピックスはTPPの基本合意だろう。主要5品目は守った、というのが政府見解だが、情報不足もあってよくわからない。
 分野によって影響の仕方は違うし、時間軸によっても異なるが、日本の第一次産業が衰退していくことは間違いない。もちろん輸出できる農産物があったり、6次化に成功する品目はあるだろうが、日本の主要産業に復活することはなく、食糧輸入国の道、つまり工業立国のこれまでの道を覚悟を決めて進むことになる。
 日本のサービス産業の生産性がアメリカ等先進国に比べてかなり見劣りする事はよく知られている。コンピューター利用の多いサービス分野が特にそうだ。しかしサービスは国内性が強いから、特に医療・福祉、要するに高齢社会対応については競争力を気にしなくてもいいのかもしれない。

 やはり、焦点は第二次産業・製造業だ。ここでは、それが優秀であり生産力が高い程、輸出を念頭におかねばならない。国内でも海外でも売る。しかし、国内マーケットは人口減少とともに縮小する。団塊ジュニアが80才になる2050年には完全にそうなる。海外市場、特にアジアと中国、そしてよくわからないがアフリカとインドが“消費”の中心地となる。ここで売れるメイド・イン・ジャパンがあれば、投資をする気になるだろうし、それで生き残る。そのための環境として、自由貿易の枠組の21世紀版であるTPPは不可欠であると考えたのだろう。これは古い図式だが、農業を捨て工業とその周辺を日本は選択したのだ。農業は地方・田舎にある。そういう地方の創生は難しい。工業の生産地は大消費地に近いところというのは昔の事だが、人材とか情報を考えるとローカルな立地は不利だ。人口は減るから、大都市郊外の無理矢理開発した団地はゴースト化し、そこに工場ができても不思議ではない。煙の出る製造業などもはやありえないからだ。

 第一次産業への影響は時間軸に乗ってジワジワとやってくるが、その事は現時点で認識できるから、農業から後継者はいなくなる。若者に20年後は海外と完全競争になりますよ、国の支持政策はありません。農業へのリスペクト(尊敬)も高まりません。コンピューターをどんなに使っても3Kであることに変わりはありません。これだけ並べたら、私がやりますという人はいなくなる。

 第二は、2%の物価目標が達成できなかったこと、ついでに原油価格が相当に下がったままであるということだ。
デフレーションからの脱却がかくも難しいことは、政策当局者のみならず経済学者も驚いた。貨幣数量説なんぞバカにしていても、どこかでそれを信仰していたから、お金・マネーをじゃぶじゃぶにすれば物価は上がると思っていた人が多い。しかし、成長経済をある期間継続し、人々に豊かさが定着していれば、この信仰は現実にならない。もちろん、現代の貧困は別の意味で問題だが。食べられなくて死ぬ、着るものがなくて凍えるというのは数としては極めて少ない。必要なものは買わなくても周りにある。考えてみればテレビはさ程の大型でなくとも、4Kでなくともよいと中高年は思う。ケータイは繋がればよい。人前に出ない引退組なら着るものも気にならない。税率の高い外食はしなけりゃいい。問題は消費の少なさではなく、コミュニケーション(家族や友人との)の欠乏なのだ。
デフレは、成熟現象であるから、日本国内ではどうにもならない。投資を取りやめる理由は大いにある。それなのに首相が経団連に談判して2兆円の投資か約束される。まさに国家先導資本主義だ。
資本主義の精神から“自律”という言葉は失われた。他者を頼りにする、その最大のものは国家だ。だから、財政危機は根本問題であるはずだが、これを気にしては手は打てない。国家先導で景気回復→税収増→財政危機の緩和というシナリオだ。国家が先導するとなれば、主役は官僚組織で、政治家はトップの数人がいればよい。あとは世襲でもなんでもかまわない。国民もそれを暗黙知っているから投票にもいかない。ロクに本を読まない人がバッチをつけて“先生”でいられる。

消費は賃金の関数というのも経済学の教科書に書いてあることだ。やはり政府が経営に賃上げを迫る。労働組合はどうしたのと言いたくなる。経済界の主要な主体が政府頼みなのだから、仕方がない。
デフレ脱却は難しいし、それが達成されたとすれば、アメリカのように出口政策のいない日本は、天井知らずのインフレもありうる。それは消費財ではなく資産インフレになる。現在の株高、都心の地代・家賃の高騰は前兆である。
アベノミクスは焦点がボケた。新第三の矢とか一億総活躍とか、なにが言いたいのかわからない目標が並んでいる。日本に必要なのは教育のやり直し、それも自分本位の人を育てるのとは対極にあるもので、もちろん、右翼の主張するものでもない。しかし、教育が課題に揚げられることはなさそうだ。大学の文系はいらないなどといっているようでは話にならない。 2016年の注目点は、TPPの現実的影響、2%インフレ目標挫折のあとの物価政策、そのとき原油価格がどうなっているかも焦点。 円安は定着。それに乗っかった分の株高はある。なにしろ、金利がゼロで他に買うべき金融資産は無い。外国人は円安なら余計に日本株を買いやすい。円は比較的暴落の心配の少ない通貨だ(中国元と比べてみよ)。

中小企業にとっては、厳しい年になりそうだ。景気がよくなっているのは東京と大企業。既に復興関係の建設・土木はピークを過ぎた。大きな投資をする気にはならない。むしろ、内部を固める、組織と経費を引き締める一年だ。資金に余裕のある会社は本業を補う範囲で財テクをする。預金はゼロ金利だし国債は暴落の危険さえある。人材育成はいまのうち。現在いる社員は去らない可能性が高い。新規部分は慎重に。時代は変わるから、同じモノをつくって同じように売って、生きていける訳はない。リスクを最小限にして変化してついていく。いつも難しいのが経営者だ。
2015.12.22 濱田 康行

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