はまなす放談

HPのリニューアルを機にコラムを設けました。
定期的というわけではありませんが、時代に遅れないように“放談”します。

vol.04 従属市場 -最近の株式市場-

 7月~8月にかけてはギリシャの混乱で世界中の株価が下がった。これが一段落したら今度は中国経済の減速。バブル状況にあった上海の株価指数は5月の5000ポイントから急落、一時4000ポイントあたりを彷徨ったものの、8月末にかけて一段の下落、最近では3000ポイントを維持できるかどうかだ。40%も株価が下がったわけだ。まだ市場が未成熟で、その分、にわか投資家・個人が多い。情報があとから伝わる個人は、こういう状況では損をしているのだろう。

 問題は、これにつられて世界中の株価が下落することだ。連動率は東京が一番。なんで上海なんぞに東京が影響されるの!私も含めて古い人間は、ついついそう思うのだけど、これは観察上の事実。午前10時頃まで東京で高くても、上海市場が開いて安いとなると急落する。日経新聞が揚げたグラフを見ても8月下落からの相関は極めて高い。これでは朝のうちは恐ろしくて日本株はいじれない。


 (日経新聞 平成27年9月1日より)


 いわゆるチャイナショックだが、この説明には疑問もある。中国の減速は今に始まったことではない。9~10%の高成長はそんなに長く続くものではない。日本の高度成長に終わりがあったように。それなのに、なぜいまさら大騒ぎになるのだろう。

 中国の成長減速は2008年のリーマンショックに始まった。この時は、とんでもない額(日本円にして50~80兆円)の財政支出と、世界が景気対策で同調したことで乗り切ったが、構造上の問題は続いている。2011年頃から減速はかなりはっきりしてきた。あまり信用できない中国のGDP統計でもそれは示されている。

① 安い労働力の供給に限界
いくつかの経済レポート(『北洋銀行・調査レポート』2015年9月号、三菱東京UFJの湯本武史氏の報告)を見ると中国の賃金は上昇している。これは農村から都市への低賃金労働供給が限界に近づいていることを示している。

② 経済成長の第二の栄養素は技術革新だが、中国発の技術革新というのをあまり聞かない。中国は、他の先進国の技術革新をかなり乱暴に導入してきたのだけど、肝心の先進国の技術革新もこのところ低迷している。

③ やはり軍事費が大きすぎる(H15年の国防費は17兆円弱、前年比10.1%増、GDP比1.3%)。南シナ海での動きを見ればわかるが、憑かれたように軍拡に熱中している。その結果民間投資にお金がまわらない。

④ 株価対策が典型だが、下手である。おそらく市場というものをよく理解していないのだろう。エリートがアメリカで勉強して、政策でなんでもできるという誤った理論を持ち帰って振りまわしているようだ。象徴的に表現すれば、かつては市場が共産党に従属していたのだが、現在は市場>共産党だ。これまで万能だった幹部にはこの逆転が理解できないのだろう。逆転は彼らの望むところだったし、成功だった。しかし、その結果は逆に彼らの政策を無効にする。同じことは金融政策でも言える。先のUSドルに対する元の切り下げもおそまつだった。これでは元が世界通貨になる訳がない。共産党が印刷している紙幣にすぎない。

中国ばかりが問題なのではない。こういう中国に振り回されている世界も大いに問題だ。特に日本はどうかしている。アベノミクスはもはや賞味期限切れだから、中国依存は仕方ないのか。とにかく日本にしてみれば最大の輸出国。中国人旅行客の爆買にも助けられている。

 しかし、このまま中国依存を続けていてもただ不安定が増すばかりだろう。GDP第2位の座はあけ渡しても資本主義の歴史と経験はあるわけだ。経済の世界でもシャオリーベン(小日本)はごめんだ。

 中国が株価下落の理由にされているけど、本当はそうではないのかも、と思いはじめた。今日(9月28日)のニュースによれば、産油国のファンドが日本株を売っているという。まだ儲けのあるうちに、石油安で困った彼らが手元資金を求めて日本株を売る。これはありそうだ。世界のファンドも日経平均一万円あたりから買っているから、この水準ならまだ当分、利益がある。彼らは、すべてコンピュータ・人工知能だから、彼らが主役になるとボラテリティが高くなる。一日、1,300円も上がった日があったし、500~600円の下げは日常だ。いまこそ株式市場先進国の日本が“安定”を示すべきだ。もっとも、最近の売買主体の60%は外国人だ。彼らは第二次安倍内閣になってから日本株の買い越しを続けた。8月以降、売り越しのようだが、まだ累計残高は15兆円近い。中国株に手を出して起こった損害の穴埋めに日本株を売るというのもあるかもしれない。
大きい声では言えないが、来るべき郵政株の公開に備えて資金ホールドを決め込んでいる資産家も多いはず。日本の証券市場が上海市場の従属物ではないことを示せるのは11月、そう期待している。

附記:東芝の事件とかVW(フォルクス・ワーゲン)の事件は資本主義の倫理性を信じていた人々にはショックだろう。中国ショックよりこちらの方が深刻なようだ。 
2015.09.28 濱田 康行

contact

お問い合わせ