ご挨拶Greetings

 これまでのところを振り返ってみると、予想外、な事が多かった。私の想像力が不足しているのかもしれませんが、例えば、マイナス金利の継続、アメリカの株価上昇などなど。
 マイナス金利下では、金融機関が利鞘を稼げなくなる。これは、分かり切ったことですが、わざわざリバーサル・レートという英語で、しかもチューリッヒの講演で示したのも、手が混んでいました。みえみえ、でもありますが。

 アメリカの株価上昇は、ホントにすごいですね。外国の株式を買うと、株価だけでなく外国為替相場も変動要素になり、とても難しくなりますので、人には薦めませんし、関係する組織でもやらないようにしています。でも、2年ぐらい前に買っておいたら、なんて、ついつい思うのです。トランプ大統領の政策のお陰というより、アメリカ経済の強さがベースにある。それは、企業収益、失業率の低下などで示されています。日本ではなかなか上向かない消費も好調です。小売大手ウォルマートの2018年5~7月、アメリカ国内既存店の売上高は前年同期比4.5%増で、この10年の最高の伸びです。

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 アメリカ経済の好調は謎ですね。2008年のあのショックからV字回復で立ち直った。考えられる理由はあります。
①国家による救済が迅速であった(1997年に危機に際してモタ(・・)ついた日本から教訓を得ていた?)。
②災いが、証券化のチャネルで世界に拡散したために自国内の被害は相対的に少なかった。
③中国が世界不況を恐れて“社会主義”でないとできないような財政支出を素早く決めた。中国があのとき、世界恐慌の止め役だったとしたら世界はこの国に恩義がありますね。
④これが私の関心事ですが、アメリカでは金融経済と実物経済のつながりが、他国と比べると、穏やかだった。また、金融界が階層化されており、リーマン・ブラザーズが属していた投資銀行業は実物経済から遠かった。もっとも、問題のサブプライムローンは中下層家計への住宅ローンですから、実物経済と結びついていたのですが、それはアメリカ産業界の中心ではありません。いわばリーマンショックは、アメリカ経済山脈の高峰で起きた表層雪崩であり、アメリカ実物経済をとび越えて、いきなり世界に波及した、と考えられます。世界は、実物経済も傷つき、その間にアメリカの実物経済が競争力を取り戻した。トランプ大統領は運もよいのです。

 運のよいのは日本の総理大臣も同じ。政権についてから株価は上昇し、若干の上下はありますが値上がりした水準を保っています。アメリカに遅れて、日本の大企業の決算も好調で、新聞紙上では“史上最高決算”の文字が踊っています。その理由は二つ。ひとつは輸出の好調、特に対中国。中国は日本から半製品を輸入して完成品をつくり世界へ輸出する。だから、米中貿易摩擦は日本にも影響します。この問題は、やや複雑だし他の要素もありますから別の機会にします。第二の要因は、日本国内の低賃金が維持され、労働分配率が史上最低の水準で下方硬直していることです。非正規労働者が2000万人以上、200万円以下の年収の人もかなりいる。アンケート調査で、自由に使えるお金がある人は7.7%、余裕がないが26.5%、そしてお金の節約を意識している人が30%。これでは消費は伸びない。インターネットで買いたいものの価格を調べるという消費者行動も強まっています。ウォルマートは、消費者に自分のサイトをみてもらい、買い付けた商品を最寄りの店のカウンターで渡すのですが、日本ではまずデパートなどの売り場で商品をみて、若い女性は試着してサイズ・色を確認してから、家のパソコンでアマゾンに注文する。デパートはアマゾンの無料のショーケースになっている。苦境なのもわかります。日本の地方都市からデパートは消え、さらに地場中型のスーパーも同じ運命にあります。生鮮品以外では勝負になりませんが、逆にここに生き残るヒントもありそうです。

 総理大臣は、あれだけのスキャンダルにまみれながらも、株高と精力的な外交で自らを支えています。土日も働く、あのエネルギーはすごいと思いますし、ちゃんと奥様の手を握って政府専用機のタラップを乗降する姿にも、ある意味、感心します。サミットや数々の国際会議をみていても、新参者は不利で、断然目立つのは古参のリーダー。中国もロシアも、手続きに問題はあるものの、独裁に近い長期政権です。これはやめられないでしょう。小さな国も、真似してます。野党を非合法にして全議席独占などの例もあります。世界経済は回復していますが民主主義は後退している。平和というより、逆に向っている。あなたは戦争が好きかと聞かれれば、すっかり洗脳されている人、家族を殺されたなどの恨みを抱いている人を除けば、多くは反対ですから、民主主義(自由な一人一票)が定着していれば、戦争の歯ドメにはなるのですが。

 マイナス金利に戻ります。3月期の金融機関、特に地方金融機関の決算はズタズタ。少し金利(長期金利)が上昇(日銀が容認!)しましたが、止まりました。上昇しすぎると、ゼロ金利のときに購入した債券(国債)が値下がりしてバランスシートが傷む。まさに進退窮まった状況です。理に合わないことを続けていると、にっちもさっちも行かなくなる、そういう典型でしょう。
 日本経済は、いくつも慢性病をかかえながら“絶妙”の適温経済の状況にあるのかもしれません。この意図せざる均衡が崩れたら、コワイですね。

 金子勇教授と2年前に開始した“地方創生”についての研究は、私が単独で書いた二本の論文を追加して、一段落です。北海道新聞のコラムは2~3ヶ月に一度ですが、時局にあったテーマを見つけて続けたいと思っています。

2018年8月30日  濱田康行
  • 氏  名 濱田 康行
  • 職  名 はまなす財団 理事長
    北洋銀行 アドバイザー
    大学生協共済連 会長理事
  • 生年月日 1948年3月12日
  • 所属学会 日本中小企業学会、日本金融学会、日本証券経済学会
  • 研究学科 中小企業金融論、協同組織論
  • 研究課題 現代資本主義経済の歴史的位置
    協同組合の現代的意義
    協同組織金融機関の存在意義
    協同組合と資本主義
  • 1966年神奈川県立鶴見高等学校卒業
  • 1970年東北大学経済学部卒業
  • 1970年全国購買農業協同組合(現全農)入社
  • 1977年久留米大学商学部講師(国際経済論他担当)
  • 1979年久留米大学商学部助教授
  • 1980年東北大学大学院博士課程修了(経済学博士 論文博士第5号)
  • 1981年北海道大学経済学部助教授(金融論担当)
  • 1991年北海道大学経済学部教授
  • 1997年~2001年北海道大学総長補佐
  • 2000年北海道大学大学院経済学研究科教授
  • 2003年~2004年北海道大学先端科学研究センター教授(併任)
  • 2004年~2008年京都大学大学院経済学研究科寄付講座教授(併任)
  • 2005年~2008年同大学経営管理大学院客員教授(ベンチャーキャピタル経営論担当)
  • 2010年北海道大学名誉教授
  • 2010年~2014年札幌国際大学・札幌国際大学短期大学部学長
  • 2014年道都大学長・理事長(2015年3月 退職)
  • 2014年はまなす財団理事長(現在に至る)
  • 2015年北洋銀行アドバイザー(現在に至る)
1988年 単著『第三の証券市場』、東洋経済新報社
1990年 共著『株式店頭市場』、東洋経済新報社
1991年 単著『金融の原理』、北海道大学図書刊行会
1992年 共著『邦銀ロンドン支店』、東洋経済新報社
1996年 単著『日本のベンチャーキャピタル』、日本経済新聞社
1996年 共訳『イングランド銀行の300年』、東洋経済新報社
2005年 共著『北の起業学』、共同文化社
2007年 編著『地域再生と大学』、中央公論新社
2012年 編著『2012・協同組合 国際協同組合年によせて』、大学生協共済連(編)、コープ出版
2013年 編著『2012・協同組合論―ひと・絆・社会連帯を求めて―』、全国大学生活協同組合連合会
1986年「世界のベンチャー育成策」、『社長の時代』、日本合同ファイナンス(編)、かんき出版、特別寄稿
1990年「イギリスにおける中小企業金融」、『中小企業金融の新潮流』、中小企業庁計画部金融課(編)、同友館、第2部第2章
1993年「貨幣資本の自立的蓄積、その実物資産からの乖離」、『構図変化と世界経済』村岡俊三・佐々木隆生(編)、藤原書店、第4章
1994年「ベンチャーへの支援制度」、『ベンチャー企業の経営と支援』、松田修一(監修)、
早稲田大学アントレプレヌール研究会(編)、日本経済新聞社、第1章(浅井武夫氏と共同執筆)
1999年「わが国における中小企業金融の変遷」、『ポストビッグバンの中小企業金融』、
国民金融公庫総合研究所(編)、中小企業リサーチセンター、第2部
2000年「SME, Venture Business Finance and Policy Assessment」、
『Klein-und Mittelunternehmen in Japan』、Nomos Verlagsgesellschaft、11 chapter
2001年「MBO(企業創造の新しい型)」、『M&A21世紀 Ⅱ』、薄井彰(編)、中央経済社、第2章
2007年「協同組織の存在意義再編」、『いまなぜ信金信組か』、安田原三・相川直之・笹原昭五(著)、日本経済評論社、第2章
2013年『バカな大将、敵より怖い』、北海道二十一世紀総合研究所(編)、北海道新聞社、
日本金融学会理事(2003年~2008年)
日本証券経済学会理事(2012年~現在)
日本中小企業学会理事(2003年~現在)、2014年から同学会北海道支部長
1997年日本ベンチャー学会の設立発起人となり、2002年から理事、
およびベンチャーキャピタル部会長。2010年退会。
日本学術振興会第118委員会委員(2002年~現在)
北海道経済学会理事(2002年~2010年)
北海道経済倶楽部 代表幹事(1993年~2012年)
大蔵省金融制度調査会部会委員(1995年)
北海道郵政局郵便貯金コンサルタント(1995年~2004年)
経済審議会(経済企画庁)特別委員(1997年および1999年)
文部省産学連携協力会議委員(1997年)
北海道大学生協理事長(1997年~2006年)
経済産業省MBO委員会座長(1998年)
経済倶楽部代表幹事(1998年8月~2013年3月)
衆議院予算委員会にて参考人(1999年)
内閣府景気ウォッチャー委員会委員(1999年~現在)
国土交通省将来展望委員会委員(2001年)
北海道証券取引所未来戦略研究会座長(2002年)
北海道TLO株式会社取締役(2002年~2009年)
北海道労働委員会公益委員(2002年~2008年)
国土交通省苫小牧東部地区検討委員会座長(2004年)
全国大学生共済生活協同組合連合会会長理事(2004年~現在)
国土交通省北海道開発分科会計画部会委員(2005年~2008年)
コープさっぽろ理事(2005年~2012年)
株式会社苫東経営諮問委員会委員(2005年~2013年)
国土交通省北海道総合開発計画起草委員(2007年)
函館工業高等専門学校外部評価委員(2007年~2008年)
国土交通省北海道開発有識者会議委員(2008年~2010年)
北海道総合通信局ICT調査委員会座長(2009年~2010年)
全国大学生協共済生活協同組合連合会会長理事(2010年~現在)
地方独立行政法人北海道立総合研究機構顧問(2010年~現在)
北海道大学大学院法学研究科附属高等法政教育研究センター客員研究員(2010年~現在)
一般社団法人WIND顧問(2010年~現在)
北海道商工会議所連合会北海道成長戦略ビジョン策定検討委員会アドバイザー(2011年~2012年)
札幌テレビ放送番組審議会委員委員長(2011年~現在)
北海道物流戦略顧問(2013年4月~現在)
札幌市都市計画審議会委員(2014年4月~現在)

書籍Book

単著『第三の証券市場』

単著『金融の原理』

単著『日本のベンチャーキャピタル』

共著『株式店頭市場』

共著『邦銀ロンドン支店』

共著『北の起業学』

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共訳『イングランド銀行の300年』

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編著『地域再生と大学』

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編著『2012・協同組合 国際協同組合年によせて』

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編著『2012・協同組合論―ひと・絆・社会連帯を求めて―』

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『バカな大将、敵より怖い』

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