ご挨拶Greetings

 はまなす財団に“身を寄せて”丸2年が経過しました。周辺の皆様の温かい見守りのおかげでつつがなく過ごしております。
 この間、とてもゆっくりですが、論文をいくつか書きました。
 はまなす財団は内閣府から認定を受けた公益法人です。全国にはこのような団体が9千以上あり、業界団体らしきものもあります。そのうちのひとつ、日本公益財団法人協会と個人的に縁ができ、研究会の講師に呼ばれたりしているうちに当協会の雑誌に書くことになりました。その結果できたのが公益法人の経済学教室(上)(下)(『公益一般法人』2016年5月、916号,917号)です。
 はまなす財団に来てはじめて、日本には多くの財団、社団、NPO等々の非営利組織があることを知りました。もっともこれまでに関係した協同組合や私立大学も法律上は非営利ですから、そういうものがあることは知っていました。知らなかったのはその数の多さ、さらにその社会的意義の重さです。
 普段、なにげなく名刺を交換している。あまり気づかなかったのですが、あとでよく見ると財団とか社団、NPOなどの肩書きの方々が多かった。自分もそういうことになってみて、資本主義社会なのに、つまり営利追求を目的とする経済体制なのに、なぜかくも多種多様の非営利組織があるのだろう、いつからそうなったのだろう、などの問題を発見したのです。この問題意識に基づいて書いたのが上記の論文です。この協会と出会ったのは、私がはまなす財団に籍を置いたということより、この協会と関係の深い学会(公益法人研究学会)の会長が堀田和宏先生であったことです。ある日、何気なく協会の雑誌を見ていたら、フロントページに先生の写真があったのです。先生には大学生協の仕事でお世話になっていました。ご連絡を差し上げたら、すぐに対談をやろうという事になり、東京での3時間が整理されて印刷されたのです。
(『公益一般法人』「お金と非営利法人」2015年11月904号)

 論文のほうは、その後一年余りしてから世に出ますが、この折には編集者の才気に助けられました。サブタイトルの「仕事観が変わる!!」は彼がつけたのです。私にはとても思いつきません。
 私の次の関心は、こういう非営利組織に働くことの意味を問う事でした。経済学者なのに『資本論』をまともに読んだことがない私ですが、剰余価値論には大いに関心がありました。私の専門である「金融論」に即して言えば、なぜ製造業よりこちらのほうが儲かり、そこで働くひとの給料は一般的に高いのでしょう。経済はものづくりから始まるのですから普通に考えれば分け前にあずかる方が多いなんておかしいのです。剰余価値の生産と分配という問題ですが、とりあえず労使間での分配問題を非営利組織で考えてみようと、かねてより思っていました。
 東京では大学生協共済連に所属して仕事をしています。仕事の内容は共済≒保険ですが、ここにも日本共済協会という業界団体があり、業界誌を出しています。『共済と保険』というのがそれですが、そこに寄稿することになりました。以前からこの雑誌にはいくつか小論を載せているのですが、理屈で埋めつくした“論文”ははじめてです。
 心配もありました。というのは剰余価値と言うキィー概念がマルクス経済学のものだからです。学問のはやりすたりは世の常ですが、この場合には政治的な激変もあって特別でした。結局、理想だった、マルクス主義にとってはゴールだった社会主義がソ連邦の崩壊で無力化しまったことで、マルクスの学問的遺産はお蔵入りになってしまいました。かつては著名な大学の経済学部はマルクス経済学でしたが、現在では思想史の一部として残っているだけです。
 業界というのは日々働いている組織の人のためにあるのですから、お蔵入りした古道具なんて引っぱりだしてどうするの?そう考えて論文はボツ、とも覚悟していたのですが、編集者の理解が得られて掲載されたのです。協会の開明的な配慮に感謝しています。こうして「協同組合と剰余効果(上)(下)」(『共済と保険』2016年11,12月 701,702号)は世に出たのです。
 いまのところさしたる反応はありませんが、大学生協に今春から就職する皆さんへの研修でこれを使いました。約60名程の若い人々に事前に読んでいただき、できれば質問も書いてきてもらうようにお願いしたのですが、その回答をまとめたものを今月のホームページの“はまなす放談”に掲載しています。
 私の専門は金融論です。もっともこの分野は計量経済学に占領され、社会科学性を失ってしまったので、私のやってきたのはいわば昔の金融論です。そもそもお金とは何か、なぜ貸借が行われるのか、その際に利子はどうして発生するのか、などから始まり、なぜ金融機関は儲かり、ニューヨークに働く金融エリートの給料が1億円以上になり、どうしてこの王国が2008年のリーマンショックで跡形もなく消え去ったのかなどを、資本主義に内在する法則にのっとって、かつ各国の歴史を踏まえて解明することです。
 こういう古典的な私の学風からみても、何か言っておかないといけないと思う現象が生じてしまいました。それがマイナス金利です。いくらなんでもそれはないよ、という止むに止まれぬ気持ちで書いたのが「マイナス金利を生きる」北海道大学『経済学研究』(第66巻第2号2016年12月)です。
 これも編集者の方が、書きませんかと誘ってくれたことの賜物です。私は、大学の教員でありながら大学の雑誌に20年以上も書いていないのです。サボっていたのではなく、金融論は時代の議論でスピードが求められるのですが、寄稿してから一年後に印刷されるようでは“手遅れ”になるため、どうしてもすぐに印刷される市販の雑誌、業界の雑誌などに書いていたのです。それにしても、よく声をかけてくれた。とても編集者に感謝しています。
 この論文は意外なところから反響がありました。アカデミズムからはないのですが、銀行業界から、それも首脳陣から感想を戴きました。マイナス金利で一番困っているのは地方の金融機関であり、そこから反応があったのは作者としてはうれしかった。
 まだ印刷されていませんが6月には『商工金融』から金子勇教授との共著論文が出ます。内容(地方創生)については次回に譲ります。20冊以上もの著書を世に送り出している社会学の大家との共同は、こちらの力量不足で大変な仕事になりましたが、良い経験になり、頭の整理にもなりました。金子教授に、そして機会を与えてくれた学術振興会118委員会の皆様、商工総合研究所の皆様に感謝申し上げます。

 化学兵器が使用され、子供が殺されました。痙攣して死んでいく赤ちゃんをみて心を痛めない人はいません。アメリカが“報復”としてミサイルを発射、隣国では核実験、大陸間ミサイル、白昼公然と行われた国家による暗殺。アラブ諸国だけでなくOECD諸国の主要都市で数々の爆弾テロ。どうも世界は戦争に向かっているようです。第二次世界大戦後の核開発競争で、もし第三次大戦があったら人類はおしまい、というかなり確実性のある警告があるのに、それに近づいている。恐ろしいことです。平和な青空は一瞬にして核に汚染された灰色に変わってしまう。そんなことのないように祈っています。誰か、この狂気を止めて欲しい。そう願わずにはいられません。私も微力ながら平和のために!

2017年4月24日
濱田康行
  • 氏  名 濱田 康行
  • 職  名 はまなす財団 理事長
    北洋銀行 アドバイザー
    大学生協共済連 会長理事
  • 生年月日 1948年3月12日
  • 所属学会 日本中小企業学会、日本金融学会、日本証券経済学会
  • 研究学科 中小企業金融論、協同組織論
  • 研究課題 現代資本主義経済の歴史的位置
    協同組合の現代的意義
    協同組織金融機関の存在意義
    協同組合と資本主義
  • 1966年神奈川県立鶴見高等学校卒業
  • 1970年東北大学経済学部卒業
  • 1970年全国購買農業協同組合(現全農)入社
  • 1977年久留米大学商学部講師(国際経済論他担当)
  • 1979年久留米大学商学部助教授
  • 1980年東北大学大学院博士課程修了(経済学博士 論文博士第5号)
  • 1981年北海道大学経済学部助教授(金融論担当)
  • 1991年北海道大学経済学部教授
  • 1997年~2001年北海道大学総長補佐
  • 2000年北海道大学大学院経済学研究科教授
  • 2003年~2004年北海道大学先端科学研究センター教授(併任)
  • 2004年~2008年京都大学大学院経済学研究科寄付講座教授(併任)
  • 2005年~2008年同大学経営管理大学院客員教授(ベンチャーキャピタル経営論担当)
  • 2010年北海道大学名誉教授
  • 2010年~2014年札幌国際大学・札幌国際大学短期大学部学長
  • 2014年道都大学長・理事長(2015年3月 退職)
  • 2014年はまなす財団理事長(現在に至る)
  • 2015年北洋銀行アドバイザー(現在に至る)
1988年 単著『第三の証券市場』、東洋経済新報社
1990年 共著『株式店頭市場』、東洋経済新報社
1991年 単著『金融の原理』、北海道大学図書刊行会
1992年 共著『邦銀ロンドン支店』、東洋経済新報社
1996年 単著『日本のベンチャーキャピタル』、日本経済新聞社
1996年 共訳『イングランド銀行の300年』、東洋経済新報社
2005年 共著『北の起業学』、共同文化社
2007年 編著『地域再生と大学』、中央公論新社
2012年 編著『2012・協同組合 国際協同組合年によせて』、大学生協共済連(編)、コープ出版
2013年 編著『2012・協同組合論―ひと・絆・社会連帯を求めて―』、全国大学生活協同組合連合会
1986年「世界のベンチャー育成策」、『社長の時代』、日本合同ファイナンス(編)、かんき出版、特別寄稿
1990年「イギリスにおける中小企業金融」、『中小企業金融の新潮流』、中小企業庁計画部金融課(編)、同友館、第2部第2章
1993年「貨幣資本の自立的蓄積、その実物資産からの乖離」、『構図変化と世界経済』村岡俊三・佐々木隆生(編)、藤原書店、第4章
1994年「ベンチャーへの支援制度」、『ベンチャー企業の経営と支援』、松田修一(監修)、
早稲田大学アントレプレヌール研究会(編)、日本経済新聞社、第1章(浅井武夫氏と共同執筆)
1999年「わが国における中小企業金融の変遷」、『ポストビッグバンの中小企業金融』、
国民金融公庫総合研究所(編)、中小企業リサーチセンター、第2部
2000年「SME, Venture Business Finance and Policy Assessment」、
『Klein-und Mittelunternehmen in Japan』、Nomos Verlagsgesellschaft、11 chapter
2001年「MBO(企業創造の新しい型)」、『M&A21世紀 Ⅱ』、薄井彰(編)、中央経済社、第2章
2007年「協同組織の存在意義再編」、『いまなぜ信金信組か』、安田原三・相川直之・笹原昭五(著)、日本経済評論社、第2章
2013年『バカな大将、敵より怖い』、北海道二十一世紀総合研究所(編)、北海道新聞社、
日本金融学会理事(2003年~2008年)
日本証券経済学会理事(2012年~現在)
日本中小企業学会理事(2003年~現在)、2014年から同学会北海道支部長
1997年日本ベンチャー学会の設立発起人となり、2002年から理事、
およびベンチャーキャピタル部会長。2010年退会。
日本学術振興会第118委員会委員(2002年~現在)
北海道経済学会理事(2002年~2010年)
北海道経済倶楽部 代表幹事(1993年~2012年)
大蔵省金融制度調査会部会委員(1995年)
北海道郵政局郵便貯金コンサルタント(1995年~2004年)
経済審議会(経済企画庁)特別委員(1997年および1999年)
文部省産学連携協力会議委員(1997年)
北海道大学生協理事長(1997年~2006年)
経済産業省MBO委員会座長(1998年)
経済倶楽部代表幹事(1998年8月~2013年3月)
衆議院予算委員会にて参考人(1999年)
内閣府景気ウォッチャー委員会委員(1999年~現在)
国土交通省将来展望委員会委員(2001年)
北海道証券取引所未来戦略研究会座長(2002年)
北海道TLO株式会社取締役(2002年~2009年)
北海道労働委員会公益委員(2002年~2008年)
国土交通省苫小牧東部地区検討委員会座長(2004年)
全国大学生共済生活協同組合連合会会長理事(2004年~現在)
国土交通省北海道開発分科会計画部会委員(2005年~2008年)
コープさっぽろ理事(2005年~2012年)
株式会社苫東経営諮問委員会委員(2005年~2013年)
国土交通省北海道総合開発計画起草委員(2007年)
函館工業高等専門学校外部評価委員(2007年~2008年)
国土交通省北海道開発有識者会議委員(2008年~2010年)
北海道総合通信局ICT調査委員会座長(2009年~2010年)
全国大学生協共済生活協同組合連合会会長理事(2010年~現在)
地方独立行政法人北海道立総合研究機構顧問(2010年~現在)
北海道大学大学院法学研究科附属高等法政教育研究センター客員研究員(2010年~現在)
一般社団法人WIND顧問(2010年~現在)
北海道商工会議所連合会北海道成長戦略ビジョン策定検討委員会アドバイザー(2011年~2012年)
札幌テレビ放送番組審議会委員委員長(2011年~現在)
北海道物流戦略顧問(2013年4月~現在)
札幌市都市計画審議会委員(2014年4月~現在)
  • 「大学生協共済連第3回通常総会 会長あいさつ」、『UNIV.CO-OP』、全国大学生活協同組合連合会

  • 「有識者ヒアリング5」、『さっぽろの産業2012』、札幌市PP.76~77

  • 北東アジア・ターミナル構想フォーラム、『開発こうほう』、北海道開発協会PP.13~18

書籍Book

単著『第三の証券市場』

単著『金融の原理』

単著『日本のベンチャーキャピタル』

共著『株式店頭市場』

共著『邦銀ロンドン支店』

共著『北の起業学』

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共訳『イングランド銀行の300年』

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編著『地域再生と大学』

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編著『2012・協同組合 国際協同組合年によせて』

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編著『2012・協同組合論―ひと・絆・社会連帯を求めて―』

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『バカな大将、敵より怖い』

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